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2005年 11月 27日 ( 1 )

久しぶりにヴィム・ヴェンダースの映画を映画館で観た。「ブエナビスタ~」以来かな?「ミリオンダラーホテル」が公開された時はあまり観る気になれなくってスルーしちゃいました。

やたら信心深い若い女の子とベトナム戦争が体に染み付いた中年男。なんの因果かこの2人は姪と伯父。私は最初ミッシェル・ウィリアムズ演じるラナってイスラエルから帰ってきたという設定だったのでユダヤ系なのかと思った。何故イスラエルに行ってたかというと父親が宣教師という設定。信心深いキャラもこの設定で納得。彼女は若いけど心の広さ、懐の深さを感じさせる宮崎アニメに出てきそうな女の子(名前もこんなんだし)。細身で肌が綺麗で少し中性的なルックスがこの役にぴったりはまってる。私はヴェンダースが映画に出す女優のキャスティング結構好きだけどね(ただ「ミリオン~」の時はミラ・ジョボビッチだったからあまり観たいなって思わなかったかも;)。

ジョン・ディール演じるポール伯父さんは途中まで軍人だった頃の自分が忘れられない、他人にも理解されないはっきり言ってなんてイタイ人なんだろうって思いながら観ていた。ラナと2人で、殺された中東人の男性の家族を探す旅の終わりの部分までずっとそう思ってた。だが彼にはヴェトナムによってもたらされた深い絶望とトラウマが9.11により蘇ったというかなり悲しい生を背負い込んだ人だと実感させられる。たぶん映画を観る者にそう感じるようヴェンダースが仕組んでいたんだろうけどね。

辛い思い出9.11を語るポールに対して、外国でこの事件をTVで観ていたラナはこの事件をむしろ歓声をあげて見ていた人たちがいたと告げる。それほどアメリカは憎まれているのだと。

以前9.11をテーマにしたオムニバス映画を観たけれど、現代史において9.11のあの事件よりもっとひどいジェノサイドはあったし、自国が大変でアメリカで起きた事件なんていちいち心配してられないよ、みたいな短編映画があの映画の中にはあった。

アメリカはひとりで世界を守ってる大国なんだというのは実はアメリカ自身の妄想でほんとはありがた迷惑なんだと思われる。それをポールのキャラに反映されてる。勝手に頭の中で敵を作り、テロリストと思い込み、やっつけようとする。その兄と仲の悪かった妹の子が心の広いラナ。とっても対照的だけどそれほど非現実的な組み合わせとも思わない。ラナの亡くなった母(=ポールの妹)の手紙を読むところが一番泣けた。家族の絆とかアメリカの憂鬱と希望がないまぜになる瞬間であった。

彼がテロリストの一味と勝手に思い込んだ殺されたパキスタン人の兄がお世辞にもオシャレとは言えない緑のぱつぱつのジャージ姿で表れこれまた脱帽だったな~。ヴェンダースって小津の影響うけてるからかなんとはなしに映画の一部に笑いのツボも軽くあったりすんのよね。

悲しくて滑稽で優しい気持ちになる不思議な映画でした。こういう映画をアメリカ人ではないヴェンダースが作ったと言うのも非常に意味深だと思う。
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by chloe7513 | 2005-11-27 23:30 | cinema